海外で増える批判、 Cultural appropriation(文化の盗用)とは?~前編~

ここ数年、主に海外で話題になることが増えている「cultural appropriation(文化の盗用)」という問題について。あらゆる方面から、クレームや非難が巻き起こった文化盗用の事例を紹介しつつ「異文化」をあつかう際の注意点などについて考えてみたいと思います。

よその文化を「盗む」という罪

Cultural appropriationという言葉はアメリカで生まれたといわれています。日本語にすると、「文化の盗用」と訳されることが多く、自国・自民族以外のよその「文化」を勝手に使用したり、無断利用することで利用者が何らかのメリット(称賛・名声・お金など)を享受するような行為、搾取的な振る舞いなどを指しているようです。ここでいう「文化」とは、たいていの場合はマイノリティ文化のこと。例えば、黒人の文化やネイティブアメリカン、ラティーノやアジア系の文化など欧米におけるマイノリティにあたるものです。

ディズニーへマオリが抗議


2017年3月に日本で公開されたディズニー映画「モアナと伝説の海」のことを覚えている方も多いでしょう。人気キャラクター関連のグッズ販売もあり、好評だった映画です。その作品に対して、ニュージーランド先住民のマオリから「文化盗用」にあたるという非難が入っているのです。その主張によれば、「他者(=マオリ)の文化の信仰や歴史を食い物にして利益を得ようとしている」とのこと。
なかでも特に問題になったのは、映画に登場する『マウイ』という半神半人のキャラクターです。神と人のミックスである半神マウイといえば、先住民マオリにとっては尊敬する英雄であり神聖な伝説上の存在。伝説によれば、英雄マウイの母はポリネシアの月の女神ヒナとされます。女神から誕生したマウイは、怪力の持ち主で太陽を支えたり、島(伝説ではココナツ島)を釣り上げたりとその逸話がポリネシアの島々に伝承されている憧れの象徴。そのため南太平洋の国々ではマウイを崇め、親しみをもって敬っているようです。民族にとって大切な存在であるマウイが、ディズニー映画では「不適切」に描写されているとして強く抗議。具体的には、次のような指摘・非難がなされています。

『昔のポリネシア人は太っていなかったのに、映画のマウイは太りすぎている』
『マウイの描写がステレオタイプすぎる』
『映画を観た人に悪い印象を与える可能性がある』

神聖なものを商業化するという罪


アメリカで映画公開された2016年。ディズニーストアで、マオリの英雄「マウイ」をモチーフにしたと思われる子ども用のハロウィン衣装が販売されたことにもマオリ族は黙っていませんでした。神聖な崇敬の対象であった半神マウイが商業化されてコスチュームになっていることにマオリの団体は我慢ならなかったようです。売り出されのは全身がまるでタトゥーのように見えるコスチュームで、それはディズニーのマオリ文化や精神性への無理解を示していました。独自の文化と歴史を持っているマオリ族にとって、タトゥーは特別なもの。部族に伝統的なタトゥーは「モコ」と呼ばれ、個人のアイデンティティ(唯一無二性)にも関わる神聖なものであって気軽にファッションとして使用されるのは屈辱だったかもしれません。観客へのウケ狙いや話題性、ビジネス的な成功のためにマオリ族の大事にしてきた文化が盗用されてしまったとしたら、盗まれた側は声をあげ抗議するのは当然ともいえます。

政治的な正しさとインターネット文化

様々な人種や文化が入り混じる国アメリカでは、エンターテインメント作品を公開するときに差別的な表現や偏見を拡散させないよう気をつけるようになっています。ブラックフェイス、ホワイトウォッシュ、文化の盗用などが疑われる作品に対してマーケット側が「ノー」とはっきり主張し、抗議運動などを起こす人々がいるからでしょう。そして、差別や偏見がないことを示す言葉として「Politically Correct(ポリティカリー・コレクト)」があります。アメリカ企業やメディアは、このポリティカリー・コレクト(PC)の厳しい水準を持ちながら活動しているのです。にもかかわらず、蔑視表現や揶揄、文化の盗用については「炎上」する例があとを絶ちません。SNSが発達して、24時間オンライン状態の社会では監視するネット市民の数が多いことと、非難の対象になる(かもしれない)ことを予め予測して、リスクをゼロにすることが現実的には無理なのかもしれません。

関連記事

  1. 女子高生の冗談から生まれた「豊川信用金庫事件」

    女子高生の冗談から生まれた「豊川信用金庫事件」

  2. ドイツのホームセンターのCMに批判殺到!人種差別的演出で炎上…

  3. 医療機関のよく書かれる口コミ抜粋

  4. ファッションブランド動画炎上を煽った理由について

  5. 楽天ステマ事件を知っていますか?

  6. 海外で増える批判、 Cultural appropriati…

PAGE TOP