海外で増える批判、 Cultural appropriation(文化の盗用)とは?~後編~

海外で耳にする機会が多くなり、他文化を勝手に私物化しているといった批判が起こる「cultural appropriation(文化の盗用)」問題。前半に続く後半として、音楽・美術・ファッション関連の事例について見ていきます。

世界的歌姫のタトゥーが炎上


日本贔屓で何年も日本語の勉強までしていた、米国歌手のアリアナ・グランデが新曲にちなんで「七輪」という漢字のタトゥーをいれたことが炎上。日本の文化の盗用をしたと米国内で批判され、最終的には日本に関連するものすべてをアリアナが「止める」という結論にいたりました。4年間習っていた日本語まで放棄し、日本語で「ありがとう」などがデザインされたオフィシャルグッズもすべて販売を中止。誰からも「文化盗用」の指摘を受けないような方針転換がなされ、炎上劇は幕を下ろしたのです。

どこがポイントなのか?

日本ではそうした概念に馴染みがなく、歌姫アリアナの漢字タトゥー批判を聞いても「文化盗用」の罪深さを感じない人のほうが多いのではないでしょうか。アメリカで生まれ、アメリカ国内で問題になることが多い「文化盗用」がらみのニュースには、米国の成り立ちや歴史的な背景(黒人奴隷制、アメリカ先住民追放等)があるといわれています。多民族で様々なカルチャーを持った国民で構成される、大国アメリカ。そこには、搾取される側と搾取する側、支配的な階層と被支配層といった相対する構図があり、長い年月のあいだ抑圧されてきたそれぞれの思いがインターネットによって噴出しているという見解も出ています。そういった背景のなか、社会的なパワーや影響力を持ったセレブリティが相対的に弱い立場にあるマイノリティ文化を使うことが批判されてしまうようです。次第に激化するようにもみえる、「文化盗用問題」は社会の格差が広がるにつれて深刻化するようにみえます。権力を握った(白人)マジョリティに抗えないマイノリティ(非白人)の財産ともいえる文化が奪われることへの危機感や怒りがネット炎上の尽きない燃料として注がれているのかもしれません。

「着物」と「キティ」が盗用された!?

ボストン美術館「着物試着イベント」


ここで、文化の盗用として批判され、炎上したアートイベント例をみてみましょう。2015年ボストン美術館で開催された印象派巨匠モネの「ラ・ジャポネーズ」着物イベントに対して、アジア系アメリカ人団体からクレームが入り騒動になりました。展示テーマの「ラ・ジャポネーズ」をモチーフにして、着物を試着できるイベント「キモノ・ウェンズデー」が企画されたのですが、批判をうけて中止になったのです。抗議理由は、マジョリティの白人が(米国内では)マイノリティのアジア系文化をまるで「コスプレ」のように扱ったため。また、そもそもボストン美術館のモネの展示が、着物についての起源や歴史、モネが描いた当時の日本社会といったものの説明がなく、表面的なものとなっていると指摘もしています。深みのない企画展示のイベントとして、着物を試着できるといった趣向はアジア系人種の精神性を傷付けるものとして強い抗議があったようです。そうした批判を受けて、ボストン美術館では着物についての説明が行われるようになりましたが、着物試着イベントそのものは中止に。

歌手アヴリル・ラヴィーン「ハローキティ」動画炎上


2014年、日本でも人気の高いアヴリル・ラヴィーンの「ハローキティ」という曲のミュージックビデオが炎上しました。アリアナとおなじく、アヴリル・ラヴィーンも日本贔屓で、ハローキティのファンであるのは有名。大好きなハローキティをモチーフにした曲を発表して、日本で宣伝動画を撮影しました。この曲と動画のクオリティそのものへの批判もあったようですが、焼酎を注いで寿司を食べる場面などが日本文化をステレオタイプ化していて差別的との非難で炎上。アヴリル自身のコメントは、自分は「日本文化を愛していて、人生の半分を日本で過ごしている。日本のファンのために東京で日本のレーベル、日本人の振付師、監督とともに(問題とされる)ミュージックビデオ撮影をした。差別主義者ではない」と弁明しています。

一般の高校生がチャイナドレスで炎上

こうした文化盗用の問題は、無名の一般市民に対しても起こっています。アメリカのとある高校のプロム(カップルで参加するダンスパーティー)で、白人女子生徒がチャイナドレスを着てパーティに参加したのを「文化盗用」とツイートされた事例があります。アメリカ在住の中国系男性がTwitterで、「私の文化はあなたのプロムドレスではない」と投稿し、賛同する人が多数でたとのこと。彼のツイートへ同調するように白人女性への批判が集まり、ネット炎上という顛末に。ただ、白人生徒を擁護する意見もあり、女生徒は差別主義者になるつもりや文化の盗用をする意図はなく、その文化へのリスペクトを示したかったと話している。今回のように騒ぎがあったからといってチャイナドレスを着ることをやめるつもりはない、とはっきりコメントしたようです。

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