実例から知る風評被害の怖さ「佐賀銀行デマメール事件」

実例から知る風評被害の怖さ「佐賀銀行デマメール事件」

2003年に九州の佐賀県で、豊川信用金庫事件と同じく「取り付け騒ぎ」が発生しました。当時、一般に普及していた携帯がデマ拡散を後押しするかたちで、噂は携帯メールによっていっきに広がったようです。では、さっそく事件の概要をおってみましょう。

クリスマス深夜の「緊急メール」

メールで拡散
発生したのは平成15年のクリスマス12月25日。深夜の1時から2時あたりに事件に発展する会話がなされたとみられています。
当時、20代前半だった佐賀在住の女性=A、が知り合いから聞いた情報が事件発生のタネになります。
「佐賀銀行、12月26日につぶれるつぶれるらしい」という話を電話で聞いたというAさんは、すぐ行動を起こしました。

良かれと思って起こした行動が…

直接つながりのある友人・知人あわせて26人に速報メールを送信。内容は、つぎのようなものと報じられています。
『緊急ニュースです!某友人からの情報によると26日に佐賀銀行がつぶれるそうです。預けている人は明日中に全額おろすことをお薦めします。1千万円以下の預金は一応保護されますが、今度いつ佐賀銀行が復帰するかは不明なので、不安です。信じるか信じないかは自由ですが、A(=本人)は不安なので、明日全額おろすつもりです。松尾建設は、もう佐銀から撤退したそうですよ。以上、緊急ニュースでした!素敵なクリスマスを』

こうした緊急性の高い内容の携帯メールを送信した結果、受信した人がすぐにメールを転送したり,電話を使って別の知人へ伝達するなどで短時間のあいだに「佐賀銀行倒産」デマが広がっていった。情報拡散の過程で、「建設会社が民事再生法を申請している」「(佐賀銀行があぶないと)テレビでいっていた」など、噂に尾ひれがついたり、歪曲されたりしつつ伝言の連鎖は続いていく

デマが広がった原因は?

デマ
当時の佐賀銀行は自己資本比率の基準をクリアしていて、経営不振という噂などなかった。それにも関わらず、一個人が発信した「佐賀銀行、12月26日につぶれるつぶれるらしい」というメールの文面が信ぴょう性を帯びて短期間に広まったのでしょうか。そこには、不運というか偶然のいたずらというのか佐賀銀行の倒産をイメージさせるマイナスの情報がありました。それらを一つづつ見ていきましょう。

1.2003年3月11日に「松尾建設リストラ報道」

佐賀銀行がメインバンクである、大手建設会社の経営危機が報じられた。3月末には53歳以上の全社員をリストラするというニュースは、各新聞で一斉に報道されたため佐賀県民の衝撃も大きかったと思われる。

2.2003年8月26日に「佐賀商工共済破綻」

大手建設会社の経営危機報道の後、佐賀県内で中小事業主を対象に共済事業(貸付け事業含む)を行っていた佐賀商工共済が粉飾決済を行っており、8月に破綻と報じられた。県民にとっては頼りがいがあり信頼を寄せていた機関の不祥事。監督官庁が佐賀県であることから、安心してお金を託した人も多かったにも関わらず、不透明かつずさんな運営実態が明らかとなった。ここでポイントになるのは、佐賀商工共済は預金保険制度の対象外であり、積立金が保護されないという点。そのため、積立金が戻ってこない可能性があるという現実を佐賀県民は経験したことになる。

3.2003年11月25日「佐賀銀行の損失数字発表」

デマメールが送信される一か月前。佐賀銀行は業績の見通しを発表した。それによって経常損失193 億円、当期純損失は196 億円を見込むという予測が世間に知られることになる。

4.2003年11月29日「足利銀行破綻」

佐賀銀行の損失見込みが公表されてから数日後、栃木県の足利銀行が破綻。メディアで大きく報じられ、預金者の銀行預金は全額保護されることが周知された。とはいえ、お金を引き出すには時間と労力がかかり、手続きがわかりにくいという印象を世間に与えた可能性がある。

最初にメールを送信した女性の処分

裁判所
平成時代の金融取り付け騒ぎとしては大規模であり、メール拡散後のわずか数日で500億円ほどの預金が佐賀銀行から引き出される・解約されるといった事態を招いた。
この騒動の原因とみられる「緊急メール」を26人に送信した20代女性は、信用毀損の容疑で佐賀警察から書類送検されたものの、結局は不起訴処分。
銀行取り付け騒ぎとメールのあいだの因果関係を明らかにできないということで嫌疑不十分と結論された。2003年というタイミングは多くの人が携帯電話を持ち、24時間いつでもオンライン状態になれるというインフラ発展期。そうした社会背景が佐賀銀行のデマメール事件を生んだ要因のひとつかもしれない。(参考サイト:佐賀銀行デマメール事件研究 https://unilab.gbb60166.jp/sagin/sagin.htm)

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